青ブタは本当に10年代のハルヒなんだろうか?

 2019年明けましておめでとうございます。自己紹介以外ではこの記事がブログ初投稿です。さて今日の話題ですが2018年秋アニメの一つ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」通称青ブタの話をしていこうかと思います。ぼちぼち冬アニメが始まっていく時期なのでもう遅い気もしますが、1ヶ月ぐらい放置されていた下書きの供養も兼ねて。

 個人的な感想から言うと面白かったですね。最近は新しいアニメにがっつりハマるみたいなことが少なくなって毎週見ていられずいつの間にかドロップアウトしてしまうことも多いんですが、少なくとも青ブタは毎週楽しく視聴でき、桜島麻衣さんが出てくるたびに「天才!!!」と謎の叫び声をあげ、なおかつ今年の夏公開予定の映画版前売り券(アクリルチャーム付き、3000円)を購入したくらいには面白かったですね。うーん、どうにも面白さを伝えられてる気がしませんが(笑)。まあこの辺は今回の本題じゃないのでこんなもんにしておきましょうか。それよりも今日は色んな人が青ブタを視聴時に感じたであろう"既視感"について色々掘り下げていきたいと思います。

 

 そもそも僕が青ブタを見始めたのには明確な理由があります。それは「青ブタがハルヒに似ている」という話を聞いたから。おそらく5月末のあるイベントで坂上秋成さんが青ブタのことを「ハルヒの発展形」と評していたのを耳にしたのが一番最初で、アニメの開始に伴ってネット上でも「ハルヒみたいな作品が好きだった人にはおすすめ」「雰囲気がハルヒに似ている」といったコメントを見かけるようになりました。その後アニメを何話か見ると確かにどこかハルヒっぽいなと感じはしましたが、正直何がそんなにハルヒっぽいのかをイマイチつかめない。そこで色々と考えていきたいわけです。

 

「青ブタは○○と△△を足して2で割ったような作品」

 Twitterでちょっと検索するとこういった文言がたくさん見つかります。そもそも青ブタは「ハルヒ」だけでなく他の色々な作品に似ていると指摘されているわけですね。僕がざっと見た範囲だと「ハルヒ」の他には

といった感じでしょうか。ちなみに「さくら荘」や「Just Because!」などは作者が同じ方なので除外しました。上3つの「化物語」「俺ガイル」「ココロコネクト」に似てると感じた人は特に多い印象ですね。僕個人としては俺ガイルを観たことがないので「ココロコネクト化物語をやっている作品」というような意見が一番しっくり来ました。

 これはある意味すごく説明しやすくて「化物語のような各1ヒロインに焦点を当て、3話程度で完結するエピソードから成る」構成で「ココロコネクトのような思春期の不安定な情動と不思議な力が呼応して困難が発生しそれをどうにか解決する」というストーリーが展開される、ということです。化物語ココロコネクトも観たことがないという読者の方もなんとなくそれに近いアニメ思いつくでしょう。事実、先ほど述べた作品群もこのどちらかの性質を感じさせるアニメが多いです。

 

ハルヒとの類似点を考えてみる

 では「ハルヒと青ブタの類似点は何か?」というところに戻っていきましょう。こっちは「化物語」や「ココロコネクト」ほど明確ではないですが、一番分かりやすいところから挙げると、まず3話でしょうか。「桜島先輩を忘れていく同級生たち、それに抗う咲太」といった構図もそうですが、後半の教室を飛び出して校庭へ走るシーンは絵的にも映画版「涼宮ハルヒの消失」における谷口からハルヒの消息を聞いたキョン甲陽園学院へ走るシーンとかなり似ています。シーンレベルの類似だと続く4話。ループ展開になったことで悪名高きエンドレスエイトを想起した視聴者も多かったようですが、特にループ冒頭におけるかえでがスポーツニュースを見ているシーンがエンドレスエイト冒頭と酷似しています(三毛猫までいるし)。

 しかしこうしたシーンレベルの類似点はいくつかあるものの、青ブタの演出全体がハルヒのそれと特別似通っているかと言われると答えは否です。詳しい方ならこの辺もうちょっと面白いことが言えるのかもしれませんが、少なくとも特徴的な演出と言われてエヴァやシャフト作品群ぐらいしか思いつかない平均的アニメ視聴者の自分からすると青ブタから特別に演出について何かを感じるということはありませんでした。

 しかし雰囲気からは何か類似したものを感じる。もうちょっと色々な要素に分けて考えていきましょう。

 例えばキャラクターはどうでしょうか。青ブタの主人公咲太はハルヒの主人公であるキョンと同様やれやれ系主人公と分類することができそうです。桜島先輩の気の強いところはハルヒに類するところがあるし、主人公を助ける理知的なヒロインの双葉理央は長門を連想させるもしれません。他はかえでのキャラとしてのポジションもキョンの妹にかなり近いですね。朝起こしにくるし。しかし全体的に考えるとなんとなく収まりが悪い。いや悪いというほどは悪くないんですが、それぐらいの類似点なら他の作品でもある程度見つかりそうという程度です。

 ではストーリーをもうちょっと詳細に考えてみるのはどうでしょうか。既に触れたように青ブタ1~3話の桜島先輩がメインとなるエピソードは「涼宮ハルヒの消失」の前半、4~6話の古賀朋絵がメインとなるエピソードでは「エンドレスエイト」との類似が見られます。先ほどの双葉理央と長門の関係性から考えてみると7,8話も消失と対応してると考えられるかもしれません。しかしこれらの類似もキャラ構成での類似点と同様にイマイチ説得力に欠けます。というのもこれらの類似点は主に題材における類似であって主題における類似ではないからです。言い換えると「記憶喪失」や「ループ」といった題材はアニメ作品において物語を盛り上げる定番要素であり、それらが共通していることで一々○○と△△が似ているという話をしていたらキリがないわけです。そして話の核となる部分について考えると、どちらも思春期の微妙な心情を引き金として事件が起こりそれを何とか解決させるというところまで抽象化すれば同じですが、青ブタでは咲太が解決プロセスで大きな役割を果たすのに対してキョンは基本的に何もしません(笑)*1

 このように「青ブタ」と「ハルヒ」は部分的な類似点は多く見つかるものの決定的に似てるというわけではないことが分かります。

 

視点を少し変えてみる

 ハルヒと青ブタの類似点を色々考えてみたところ、実はハルヒと青ブタってそんなに似てないのでは?というところにたどり着いてしまいました。これはいけません。これまでの分析にどこか間違いがあったのでしょうか?

 訳が分からなくなってきたときはできるだけシンプルに考えるのが得策です。今考えてることは「青ブタにハルヒっぽさを感じる」という事実についてです。このセンテンスに対して分析が甘い部分はどこでしょうか?おそらく「っぽさ」の部分でしょう。つまり「青ブタ」と「ハルヒ」の話はしてきましたが「ハルヒっぽい」ということがどうゆうことなのかについては何も考えていなかったわけです。

 ハルヒそのものの性質と我々がハルヒに対して抱いてるイメージには乖離があるわけで、では普通ハルヒに対して抱いてる印象というのはどんなものかといえばおそらく「深夜アニメの始祖」であるというのが僕の見解です。正直これが正しいかと言われるとかなり微妙なところがあると思うんですが、実際のところ今現在ハルヒ以前のアニメが紹介されることはかなり少ないでしょう。そしてハルヒから見たとき直系のように感じられるアニメ群と傍系のように感じられるアニメ群という分類が考えられるわけです。直系のうち1つとして感じられるのが(なろう系以前の)ラノベ原作アニメです。特に高校を舞台として男主人公に対して何人かのヒロインがいて、主人公は自らが何かを引き起こすというよりはヒロイン側の事件に巻き込まれる、というような話です。ハルヒも青ブタもこれに属すると言えます。そして皆が薄々感じていた「ハルヒっぽさ」というのは単にこの性質を指していただけなんじゃないかというのが僕の結論です。ゼロ年代後半から10年代の頭に流行していたテンプレラノベものが近年のなろう系作品やアイドルアニメ、日常系アニメの興隆により地位を下げる中、青ブタがこのしっくりくる名前の見当たらないジャンルに属していることを一番端的に表現するために「ハルヒっぽい」という言葉が選ばれたのではないかということです。ここまで来たところで自分としては気持ち悪かった部分が割と腑に落ちたんですがどうでしょうか?

 

 

*1:(追記)「キョンが何もしない」という表現に違和感がある人は正しくて、正確に言うと「キョンはほとんど何もできない」です。ここについては「周りが大体特殊な能力を持っている中キョンには何の力もない」「ハルヒに願望実現能力について教えることができない」というハルヒの設定上仕方ないところです。もちろん、キョンが色々走り回ってるのは事実なんですが、閉鎖空間から脱出するのにハルヒにキスをしなきゃならないと教えたのは長門と朝比奈さん(大)だし、消失で鍵がそろったのもほぼ偶然なわけで、問題解決の過程でキョンがクリティカルに役に立ってるというよりは他人に誘導される形で動いてる事の方が圧倒的に多いわけです。繰り返しますが、これはキョンが悪いわけじゃないし、普通の男子高校生なんてそんなもんなんです。ただ、異常に物分かりがよくてヒロインの悩みを的確に解決していく作太とは全然違います。